
マッハ5の極超音速機が実現すると、現在10時間ほどかかる太平洋横断が、2時間に短縮されます。極超音速機実現のための技術課題には、厳しい空力加熱環境下で作動可能な極超音速エンジン技術、遮熱構造技術、耐熱複合材料技術、揚抗比向上のための空力技術などがあります。マッハ5飛行時にエンジンに流入する空気温度は約1000℃にも達するため、既存の航空用ジェットエンジンは作動することができず、新しいタイプのエンジンを開発する必要があります。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、長期ビジョン2025においてマッハ5クラスの極超音速機技術を実証することを航空分野の主要目標に設定し、極超音速機技術の研究開発をスタートしました。

マッハ5の極超音速旅客機の成立性を検討するために、乗客100人を想定したシステム検討を実施しました。予備的な設計解析で得られた最適形状を用いて、遮熱コンセプト、艤装レイアウト、および構造様式を設定し、設計解析手法の妥当性を検証しました。また、極超音速風洞実験と数値流体解析の結果を用いて、機体の空力特性と空力加熱特性を評価し、設計解析手法の精度向上と高速化を図りました。また、極超音速で巡航するために必要な液体水素燃料を用いた機体冷却システムと機体冷却時のエンジン性能モデルを構築しました。
今後は、確立された設計解析手法を用いて極超音速旅客機の改良設計を進めるとともに、主要技術の飛行実証を目的とした極超音速実験機の設計検討を進める予定です。




高速で長距離を飛行するために必要な燃料を搭載できる体積を確保するとともに、高い揚力と低い空気抵抗を両立可能な機体空力形状に関する研究を進めています。
離着陸飛行とマッハ5巡航飛行の両方で安定して飛行できる形状を得るために、風洞実験や数値解析で空力性能を評価し、形状を改良しています。




[関連] ジェットエンジン技術研究センター 極超音速ターボジェットの研究開発
極超音速エンジンの研究では、2004年より推力1kN級の極超音速ターボジェットエンジンの開発に着手し、2008年に世界で初めて地上静止状態での総合システム実証に成功しました。このエンジンは、液体水素燃料を冷媒とする熱交換器(空気予冷却器)を備え、極超音速飛行中にエンジンに流入する高温空気を冷却することで、最大マッハ5まで作動可能となっています。
宇宙科学研究所と連携して、気球利用型実験機を用いた極超音速エンジン飛行実験(マッハ2程度)を行いました。飛行実験時の重力方向の変化に対応するために、実験機を縦型に保持した地上燃焼実験も実施しました。現在は、マッハ5飛行環境におけるエンジン作動実証を目指して、風洞設備における燃焼実験や、マッハ5飛行実験の検討を進めています。






